弁護団が東京地裁に出した「被疑者の早期釈放を求める申入書」です。この逮捕と勾留の不当性が法律面からよくわかる内容です!

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被疑者  ●●●●

被疑者の早期釈放を求める申入書

2013年12月17日

東京地方裁判所 裁判官 殿

弁護人   一 瀬  敬 一 郎

本日、検察官から、上記被疑者にかかる威力業務妨害被疑事件について勾留延長の請求があったが、同被疑者には逮捕以降、弁護士吉田哲也、同上杉崇子、同浅野史人及び当職が毎日(1日に一回以上)接見してきたが、それらの接見を通じ現在の勾留自体が著しく違法であることが明らかになっているし、さらに勾留延長を認める事は著しく不当、違法であると思料するので、弁護人は被疑者の早期釈放を求めて下記のとおり申し入れるものである。

第1 申入の趣旨
  本件については勾留延長請求を認めず、直ちに被疑者を釈放するべきである。

 

第2 意見の理由

1 被疑者に本件被疑事実の威力業務妨害罪を問うべきでなはい
本件威力業務妨害罪は、「参議院の会議」被疑者は、2013年12月6日午後10時51分頃、参議院本会議場において運動靴1足を片方ずつ議場内に投げ入れ、同議場を一時騒然な状態に陥れ、議事の進行を阻害し、もって威力を用いて参議院の業務である会議を妨害した、というものである。
しかし本件においては、被疑者の所為を威力業務妨害罪に問うこと自体が誤っており、また勾留の理由もさらに勾留延長を認める理由も存在しない。

2 被疑者の所為は威力業務妨害罪を構成しない。

 (1)本件被疑事実では「参議院の業務である会議を妨害した」ことが業務妨害の事実関係になっている。しかし、かかる議会の議事の類には刑法が別に公務執行妨害罪を設けていることとの均衡からみて、威力業務妨害罪の成立を認めるべきではない。この見解は、すでに有力な刑事法学者から唱えられているし(『刑法綱要各論[第3版]』535頁)、近時もこの見解は支持されている(別紙の生田勝義「警察への虚偽犯罪通報は偽計業務妨害か?」立命館法学2011年3月号の30頁以下参照)。            上記の見解は、本件の議事である「特定秘密保護法案の審議」に重大な憲法違反の疑いがあり、参議院が同法案について強行採決を行うことに多数の国民が反対していたことを見るとき、合理的な理由があると思料される。よって、被疑者には本件被疑事実で威力業務妨害罪に問うことは誤っていると言わなければならない。

(2)本件被疑事実が述べる業務は「参議院本会議の議事」であるが、その「参議院本会議の議事」は、特定秘密保護法という憲法違反の悪法を審議の打ち切り・強行採決によって成立させようとするものであり、違法な業務にほかならない。すくなくとも公務について刑法234条の成立を認める場合には、その業務は適法なものであることを要するというべきであるから、本件の場合のように憲法違反の疑いすらある違法な業務の場合には威力業務妨害罪の構成要件に該当しないと言うべきである。

(3)また威力業務妨害罪は、自由に対する罪であるから業務の運営が実際に害されるという結果の発生が必要になる侵害犯である(平野竜一『『刑法概説』188頁 1977年東京大学出版会及び大谷實『刑法抗議各論』新版第2版第3刷140頁 2008年3月1日成文堂他多数)。

ところで、勾留状記載の被疑事実には,前記のとおり「同議場を一時騒然な状態に陥れ、議事の進行を阻害し」との記載がある。 しかしながら、参議院が提供しているホームページの画像を見れば明らかなように、「運動靴1足を片方ずつ議場内に投げ入れ」たという被疑者の所為によって議場が一時騒然な状態に陥ったわけでも、議事の進行が実際に阻害されたものでもなく、参議院本会議の業務の運営が実際に害されたという結果がそもそも発生していない。よって、本件の「運動靴1足を片方ずつ議場内に投げ入れ」たという被疑者の所為は、威力業務妨害罪の構成要件に該当しない。

(4)さらに、上記(1)でも一部述べたように、本件の場合の参議院の議事は、そもそも特定秘密保護法が憲法違反の悪法であり、何よりも参議院議長がその審議を打ち切り・強行採決によって成立させようとしたという顕著な違法事実が存在する。したがって、被疑者の所為に違法性が認められないことは明らかであり、被疑者には威力業務妨害罪が成立しない。

 

3 勾留の理由がない

(1)罪証隠滅のおそれはない

ア 被疑者は現行犯逮捕時に逮捕に伴う捜索差押を受けていることに加え、本年12月11日には被疑者の自宅に捜索差押が実施されている。したがって仮に隠滅の対象となる証拠が存在するとしてもそれらはすべて捜査機関の手中にあり、被疑者においてこれを隠滅する可能性があるとすることはおよそ荒唐無稽であるとしか言いようがない。

イ また被疑事実とされる事象のうち「運動靴1足を片方ずつ議場内に投げ入れ」たことの「目撃者」としてはせいぜい被疑者を制圧した衛視しかいない。
さらに被疑事実が行われたとされる時間の参議院本会議場内の状況や議事進行の状況について証拠たりうるものとしては、議事録、居合わせた議員、参議院事務局職員ないしその作成にかかる報告書類、そして中継放送を行っていた報道機関の映像記録等が想定しうる。
被疑者においてこれらの者を威迫しあるいは偽証させ、又は改竄を行う危険があるとすることなど、空想次元の産物でしかないと言うべきである。

(2)被疑者が逃亡するおそれはない
被疑者は逮捕直後の取調べ時において既に氏名住所を明らかにしている。

このことに加えて、被疑事実とされる事象は参議院本会議での特定秘密保護法審議に際してなされたものである。同法案が可決・成立するに際して2013年12月3日に国際連合人権高等弁務官事務所のピレイ人権高等弁務官が、「『秘密』の定義が不明確で、政府にとって不都合な情報が秘密扱いされ可能性がある」「日本国憲法が保障する情報アクセス、表現の自由を適切に守る措置がないまま法制化を急ぐべきではない」との異例の懸念を表明したことからも明らかなように、民主主義の基盤を脅かす稀代の悪法と言うべきものである。

被疑者はこの特定秘密保護法の問題点と危険性を鋭く指摘し、同法の廃止にむけて活動することを明らかにするとともに、自らに加えられた刑事弾圧に抗していく旨を表明している。この被疑者が釈放された途端に刑事処分を恐れて行方をくらますなど、およそありえない事態であると言わざるを得ない。

 

4 勾留を延長すべき理由がない

(1)被疑者は現行犯逮捕されているのだから、本件被疑事実に関する関係人とは、被疑者を除けばせいぜい被疑事実とされる事象を現認した衛視、参議院本会議場に居合わせた議員や事務局職員以外ありえず、これらの者について事件後10日以上が経過しているのに取調べが未了などということはありえない。そして、警察当局は既に参議院本会議場内にいた同院職員らの第三者から供述を得ているから、関係人の取調べが未了であるということなどおよそありえない。また被疑者に対しては、12月11日(水曜)から15日(日曜)まで取調が全く行われていない。

(2)さらに、現行犯逮捕時に被疑者は逮捕に伴う捜索差押を受けていることに加え、本年12月11日には被疑者の自宅に捜索差押が実施され、た。証拠解析・精査未了ということもありえない。

(3)また勾留延長請求の時期になってなお「犯行再現」をしなければならない情況であるとすれば、もともと証拠不十分であるということか、新たに証拠を捏造するということに他ならない。

(4)そうであるから、勾留を延長すべき理由は何ら存在しない。それにもかかわらず、強いて勾留延長の理由が存在するというのであれば、その狙いは取調べを口実に被疑者に「反省の弁」等を述べさせることや、特定秘密保護法に反対する諸活動に参加しないよう「転向」を強要することくらいしか残されていない。しかし、もちろん被疑者に「反省の弁」を述べさせ、あるいは「転向」させることなど勾留の目的には含まれず、これらの目的を実現するために勾留を請求することが許されないことは明らかである。

 

5 結語
以上のとおり、被疑者の所為は威力業務妨害罪を構成しないことに加え、勾留の理由も、被疑者に対する勾留を延長する必要もともに皆無であるから、被疑者は直ちに釈放されるべきである。

以 上

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